23、湾岸の王者 スズキさん

湾岸の魚の王者はスズキだ。スズキは出世魚なので幼魚のときはセイゴ、成長し青年期がフッコ、大人ななるとスズキと呼ばれる。だいたい30cmまでがセイゴ、70cmまでがフッコ、70cm以上がスズキだ。

スズキにはもう1つの呼び名がある。シーバスだ。ルアーで淡水のバスを狙う人たちが、いつしかバスに似た海のスズキ(セイゴ、フッコ)をそう呼び始めて定着した。

私が初めてスズキの幼魚セイゴを捕まえたのは中学3年に時だった。友人と外房の御宿に海水浴に行った時だった。

たまたま海岸に流れ込んでいる川で水遊びをしているとのんびりと泳いでいる魚がいた。1種類は丸い胴体をしていた。もう1種類が平べったいきれいな形だった。丸いのがボラ、奇麗なのがセイゴだった。アミもなかったので2人の友人と3人で岸の部分に追い込んだ。なぜかその魚達の動きは鈍くて割合簡単に捕まえられることができた。結局4,50匹も捕まえて、お土産として持って帰った。

家で塩焼きにして食べると、まずいの何の。結局10匹以上の魚を捨ててしまった。その時以来、私はボラとセイゴは臭くて食べられないと思っていた。

スズキとセイゴが同じ魚だとわかったのは大人になってからだ。あの臭い魚と刺身で食べるおいしいスズキがどうも頭の中で一致しなかった。

次にセイゴを手にしたのは何と江戸川でだ。江戸川といっっても下流ではない。地元の葛飾橋の下。ハゼを釣っているとき偶然に掛かった。こんな上流にセイゴがいるのかと驚いたが、セイゴは餌の小魚を追って10km以上も川を登ることがあるらしい。ハゼと一緒に持って帰ってが、やはりあの思い出があったので、少し食べるのは躊躇した。ハゼと一緒にから揚げにして、臭ければやめることにした。

予想に反して味は美味しく、しかもハゼに劣らぬ白身の淡白な味だ。御宿のあのセイゴは何だったのだろう。おそらく30年前に比べて下水完備が完備されてきて水質が向上したからだろう。それからはセイゴが掛かってもありがく食させていただいている。

ただ、わざわざ狙って釣るわけではなく、たまたまハゼやキスの外道で掛かるものを持って帰るだけだった。初めてそれだけを狙ったのはつい最近だ。それも船橋でだった。正直いって私の廉価版の竿でフッコクラスのサイズの魚が上げられるとは思っていなかった。

私には苦い思い出がある。サビキ釣りの竿をほおっておいてスズキに竿ごとさらわれたのだ。その竿は私の持ち物で最高級品だった。竿プラスリールで5000円はした。結構ショックでその後はスズキの通るような場所では絶対に置き竿をしないよう心がけていた。

こんなことからも、釣り場でシーバス釣りのルアー職人を見ても関係ない世界の人のように見ていた。

3,4年前のことだ。夏に岡山に行って夜釣りに出かけ時のことだ。メバルを狙うつもりで出かけたのだが、義父は仕掛けを見るなり「そのハリスじゃダメだ。」と言いハリスを付け直した。そのハリスは20cmのメバルを釣るにはいかにも大げさで、見るからにオーバースペックだ。。

「なにが掛かるかわらんからな。これがいいんじゃ。」

確かにその通りだった。

岡山の家の近くに幅10m程の小さな川があり海に流れでいて、河口に橋がかかっている。その上から竿を出した。電気ウキにスナップサルカンと板オモリ、先には9号のハリにハリスは似つかわしくない3号で釣り始めた。

2、30分すると早速あたりがあった。電気ウキがすうっと引き込まれてゆく。いままで見たことのないアタリだった。メバルとは明らかに違う。白い大きな魚体が苦し紛れに飛び跳ねる。セイゴだとわかった。いや、セイゴサイズではない。30cmは優に超えている。フッコだ。2,3分のやり取りをしてようやく引き上げたのは40cmくらいのフッコだった。3号のハリスが役立った。

このことが大きなヒントになった。つまりハリスさえ太ければハリは大きくなくても案外大丈夫。もっと簡単に言えばハリスが3号あればフッコは大丈夫ということだ。東京湾で試してみようと思った。

塩焼きにしたフッコは美味だった。岡山なので、当然臭くない。

船橋には昼間サビキでイワシやママカリを釣りに行ったことはあるが、夜に出かけたことはなかった。いつもの岸壁に出かけたが一切人の気配がなかった。「人のいるところで釣れ。」という鉄則には外れるが、とりあえず試してみることにした。いつものセットに電気ウキと13号の丸セイゴバリ、ハリスは3号だ。このハリはハリセットのものだ。3号のハリスで一番小さなハリはと探すと、この13号丸セイゴにたどり着いた。

タナは *1ヒロくらい。浅めだ。餌を追うスズキは表層を泳ぐ。さすがに引っこ抜くには大きすぎるだろうと、タモアミを事前にはちゃんと準備しておいた。

竿を出して1分もしないうちにアタリがあった。電子ウキがすうっと入っていく。フッコのあたりだ。私はあわてて竿を引いた。が、早く合わせ過ぎた。簡単にばれてしまった。フッコに早合わせは禁物だ。ゆっくり食べさせた方がいい。大きくウキが沈み、竿がしなるまでは無理に合わせない方がいい。

ばれた竿の餌を取り換えているともう1本の竿にアタリが来た。今度は少し様子を見て竿がしなった時に一気に合わせた。強力な引きで、時々水面を飛び跳ねる。有名な「エラあらい」だ。私のこの廉価竿が折れないか心配だった。岡山で釣ったものよりもさらに一回り大きいサイズだ。少し時間をかけて弱らあせてから、岸壁近くまで引き寄せてタモを用意した。こんな大きな魚を引き上げるのは初めてだったし、岸近くになってもまだ魚が暴れるので、なかなかタモの中に魚が入らない。10回くらいやり直してやっとのことで引き上げた。

魚は50cm弱の大物だったが、2000円のセットでもまるっきり問題ない。

スズキ(フッコサイズ)

スズキをさわるときはその鋭いエラに注意した方がいい。私も2回ほどあのエラでけがをした。

スズキはびっくりするほど表層を泳ぐ時もあるが、完全に底に張り付いていることもある。隣人のハゼの仕掛けにスズキが掛かって、竿を持っていかれたのを見たことがある。アタリがない時はタナを積極的に変えることをお勧めする。ちなみに夜は表層が多いので、スナップサルカンのすぐ上に電気ウキを待ってくることも多い。この時のタナはたった40cmだった。

次の1匹も1匹目同様の良型だった。ところが、3本目を釣ろうとアタリを待っているときに黄色いライトを点灯させて1台の車が近づいてきた。警備員が降りてきて、ここは釣りが禁止だと言った。前の年の5月にイワシを釣っていた時はなんにも言われなかったのだが、素直に従った。魚が大きかったのでこの2匹で十分だった。

 あとでSOLAS条約のためだとわかった。

帰ってきて、釣果は行きつけの居酒屋のマスターに調理してもらった。心配していた臭みもまるっきりなかった。

フッコ・セイゴは餌ジグにもよくかかる。ただし大きいものはハリを折って逃げてしまう。

1、塩焼き

もっとも単純だが、これだけでも相当いける。

2、香葉焼

臭みが気になる方にお勧め

①塩コショウとレモングラスとバジルを腹と周りに敷き詰め丸ごと1匹をアルミホイールで包んで焼く。他のハーブでも良し。

②食べるときにゆずまたはレモンをかけていただく。

3、刺身

定番です。肉厚にスライスしてわさび醤油で。

4、あらい

これは私のおすすめ。

①薄くスライスした身を氷水で絞める。

②タレは出汁、白みそ、酢、砂糖を好みで混ぜる。

③ゆずまたはレモンをかけタレで。最高の1品だ。

みそ汁もおいしい。

今回のポイント

私は最近新港大橋の袂付近や市川港、江戸川河口で釣っている。釣果は変わらずに良好だ。

湾奥地域ではこのスズキが最も釣れる魚だろう。ルアーにもよくかかる。特に春の*バチ抜け時や秋には入れ食いの時もある。

家の近所の江戸川の金町浄水場の取水塔近辺でも釣れる。自転車で道具とビールを入れたクーラーボックスを持って出かける。のんびりとビールを飲みながらの電気ウキでの夜釣りはたまらない。しかも魚に臭みもない。

スズキの釣り方(フッコ・セイゴ)

セイゴ・フッコはどちらかといえば夜行性の魚だ。あまり昼間に釣れることはない。特にフッコクラス以上になるとその特徴は顕著でむしろ夜しか釣れない魚だといってもよい。

釣り方としてメインになるのは電気ウキを使ったウキ釣りで9号から13号くらいまでにハリで餌の青イソメを房掛けにして狙う。仕掛けを自然に流して待つ。最初の軽いアタリではアワセず、次の大きなアタリでアワセる。早合わせは禁物だ。

夜行性の魚なのでメバルと同じような場所で釣れることも多い。メバルの置き竿に大型のフッコが掛かって竿ごと持っていかれることもしばしばだ。メバルと同じ仕掛けで釣れるということは餌ジグでも釣れるということだ。ただし超大型の場合は竿ごと折られることもある。

もちろんメタル系ルアー釣りでもメインの魚でもある。ルアー系の場合は早めにアワセないとばれてしまう。

*1ヒロ:両手を広げた長さ  約160cmくらい
*バチ抜け : 2月から3月にアオイソメやゴカイ類が産卵のために大量に表層を漂う様子。このバチを狙って現れるシーバスが入れ食いになるチャンスが訪れる。

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