6、江戸川でアユ釣り?

江戸川でアユが釣れる。

いつものようにハゼ釣り用の青イソメを買いに行くと、近所の釣り具屋さんでそんな話を聞いた。季節は春らしい。はじめてその話を聞いた時私はガセネタだと決めつけていたが、よくよく聞くと納得した。

アユは川で産卵し、海で成長する回遊魚だ。秋に川の下流域で卵から孵化する。生まれて間もない幼魚はそのまま川を下り、海で成長する。5~10cmに成長した稚アユは産卵のため川を登る。川の上流域で産卵のために餌を食み、やがて秋に下流域に下りそこで産卵する。産卵を終えたアユは1年というの短い一生を閉じる。

そんなことは知らなかったので、アユはずっと川の上流にいる魚だと思っていた。

ということなら江戸川を上っていくことも納得できる。そんなことを思いつつもその時は秋だったので気にも留めていなかった。

年が明け、1,2月の休漁期に入ってそのことを思い出し、だんだんむずむずしてきた。

みなさんもそうだろうが私も眠たいのや寒いのや苦しいのは嫌いだ。本当に釣りが大好きな人はそんなことは我慢してでも釣りに行くのだろうが、にわか釣り師の私には無理なことだ。早朝眠たいのを我慢したり、寒いのを我慢したりはしない。だから12月から2月までは休漁期だ。

ネットで調べると釣れる場所は江戸川の篠崎水門、行徳橋、見明川河口付近の三か所で、中でも篠崎水門がいいとのこと。篠崎水門はこの街からはすぐ近くだ。車で15分ほどで行ける。桜が咲きだすのを見計らって出かけた。

日曜日だったのと天気が良かったことももあってか水門のあたりは山盛りの人だかりだ。それらがすべてアユ狙いの釣り人だった。ひとつの釣り場でこんなに人がいるのは見たことがなかった。これじゃ竿を出すスペースもないかもと、半ばあきらめていたところ、タイミングよく一人抜けてくれた。早速場所確保して、周りの方にあいさつがてら情報収集。

「これアユを釣ってるんですよね。」

「サビキはワカサギ用で大丈夫でしょうか。」など尋ねると、思った以上のアドバイスが帰って来た。

「オモリは2号。タナは2ヒロぐらい。」

「途中にウキをつけておいた方がいいよ。ウキは沈むがそれで仕掛けの深さがわかる。」などなど。結局仕掛けはこのようになった。

いつものリールセットにワカサギ用のサビキセット。ハリは4号、7本セットのもの。途中に小さめの玉ウキ。竿は長めの方がいい。なるべく手前から沖まで探る方がいいからなのだが、私は2.5mのものが最長なのでそれで我慢した。

隣人にお礼を言って釣り開始。

釣り方は仕掛けを落としてひたすらサビくだけ。その場所でアタリがなければ、別の場所に落として同じ動作を繰り返す。

5分ほどするとビクビクという明らかなアタリを感じた。あげてみると10cm程のアユが掛かっている。しかも2匹だ。思ったより大きい。ちゃんと鮎の形をしている。匂いを嗅いでみると、かすかではあるがあの独特な匂いがする。確かにアユだ。

1度釣れると同じ場所でしばらく釣れる。群れで回遊しているのだろう。

釣れたアユをビニールバケツに入れていると、通りかかる人に何の魚だと聞かれる。返事の反応はいつも同じだ。

「こんなところでアユが釣れるんだ。」

そりゃそうだ。釣っている本人が1番びっくりしているんだもの。

1時間ほどで夕食のおかず分は確保したので納竿とした。

この日の夕食には絶品のから揚げが出てきたことを報告しておこう。

その後この釣りは違法であることが分かった。江戸川には漁業権がない。そのことで釣りは自由だと勘違いしていた。ではなぜ違法かというと東京都と千葉県の水産資源保護のための条例で「水面漁業調整規則」に次の2項目がある。これに違反するのだ。

1、禁漁期 1月1日から5月31日まで

2、魚の大きさ 10cm以下

江戸川のアユ(釣り禁止)

10cm以下は微妙な線だが、4、5月の禁漁期には完全に引っかかる。多分この釣りをやられている方はそんなことは知らないだろう。注意する人もいなければ、注意する看板もない。なぜか黙認されている状態だ。 残念なことだが稚アユ釣りは今はやらなくなった。

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