11、アナゴンダ

長浦港で初めてカレイを釣ったのは11月だった。すぐに寒波が来て結局その年はその1回しか行けなかった。

年が明けて春になると、いつものように釣りシーズンが始まった。この年のイワシは駄目だった。そこで長浦を思い出した。イワシの回遊はどうも東京湾を左回りするらしい。船橋でまだダメでも長浦ならいけるかもしれないと思い、ゴールデンウイークの初日に出かけた。

ものぐさなのでこの日も午後から出かけた。ゴールデンウイークだというのに時間が遅いので全く混んでいない。1時間ほどで到着した。

到着後早速サビキ仕掛けでイワシを狙って釣り開始。

勢いよく始めたのはいいがいくらたっても一向にイワシは掛からない。始めた時間が遅いのでそのうち暗くなってきた。しょうがないのでジェット天秤で底引きしたがそれもダメ。最後の手段として保険のために用意しておいたカニマンションを投入した。待っている間も底引きを続けたがやっぱりあたりがない。さすがに今日はだめだなと思ったが、最後のカニかごに期待をかけた。2つ投入しているが、たぶん今の季節では早すぎてカニは入らないとふんでいた。

俺は行徳以外の場所でもよくカニマンションを入てれいた。たとえば船橋や江戸川の河口などだ。でもその時までに、行徳以外でカニを捕ったことがなかった。季節も関連しているのだろう。秋がいいのだと思う。

まだ季節は春。場所もいいのかよくわからない。期待せずにカニマンションを上げ始めた。

1つ目には餌の残りが入っているだけだった。2つ目を上げ始めた。

海面に見え始めたかごの中になにか見える。黒いものだ。しかし、カニではない。行徳でカニかごに20cm以上のハゼが入っていたことがあるがそんなレベルではないサイズだ。引き上げるとそこには巨大なアナゴが入っていた。初めて見る巨大サイズのアナゴだ。長さは80cm、幅は太いところで10cm近くあった。普通に釣れるアナゴと比べて長さは1.5倍以上、幅は3倍近くあった。

「とったどー。」という心の叫びが聞こえた。

中にいるアナゴはこちらを睨みつけ口を開けて威嚇している。カゴから取り出すため体をつかもうとすると鋭い歯で噛みつこうとする。間一髪でかわした。

「こいつは普通じゃない。」と俺は思った。魚とは思えない。子供の時格闘したアオダイショウを彷彿とさせた。

俺は軍手をはめて、カニ用のハサミを取りだし武装した。

スルスルと逃げようとするヤツを靴底で押さえ、かみついてくる歯をかわしながら、やっとのことで取り押さえクーラーにぶち込んだ。ちょうどアオダイショウを捕まえたときと同じ感じだ。戦闘終了。

クーラーに入れてもこいつは激しく抵抗してドタバタやっている。

おかずはヤツ1匹で十分だと思い、その日は納竿した。あきれたことにヤツは家に戻ってもまだ暴れていた。あんな凶暴なヤツにかみつかれてはたまらないと思い、料理は明朝に延期した。

黒アナゴ

翌朝になりクーラーを覗くとさすがにヤツも動かなくなっていた。料理を始めたが滑って滑ってどうしようもない。3枚の下ろすのはあきらめて、ぶつ切りにして煮込んだ。

果たしてその料理は。。。。前のアナゴと同じ味を期待していたそのは。。。。まずかった。小骨が多くて食べられたものではない。

あとでわかったが、これはアナゴではなく「黒アナゴ」という別種だった。大きいものは1.5mにもなるらしい。とても凶暴で指など噛まれるとちぎれてしまうほどだという。図鑑には食べられないと書いてある。俺はこの怪物をアナゴと蛇のアナコンダを掛けて「アナゴンダ」と命名した。

あとでわかって冷や汗タラタラだった。クワバラクワバラ。

ポイント

長浦港など水深の深い港。富津新港でもカニマンションによく掛かる。釣ったことはない。多分廉価版セットでは掛かっても持ち上がらない。

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