10、華麗に釣る

行徳でのハゼとワタリガニ、船橋でのイワシとママカリ釣りも2年目の秋をを迎えていた。釣果には満足していたが魚種の少なさに少々飽きが来ていた。そろそろ何か新しい力を加えたい。そう考えた私は東へ向かうことにした。

まず、地図の中で目についたのは船橋とは目と鼻の先にある幕張海岸。人口の砂浜だ。海岸線はここから検見川浜、稲毛浜、千葉港とつながっている。

幕張の浜に降りるとあっさりと「海岸での釣り禁止」と出ていて誰も釣りなどしていない。あきらめた。次に検見川浜。海に突き出た腕状の防波堤ではたくさんの釣り人が竿を出している。バケツをのぞいてみると魚もちらほら。しかしよく見るとイワシだった。イワシだったら船橋の方がいいようだ。別のを覗くと大きなカレイが入っていた。これはいいかなと思ったがカレイは300mもある防波堤でたった1匹だった。他をあたってみようと考えた。

そこから3km程東に向いて進むと海岸は砂浜からテトラ帯になっていた。砂浜は釣り禁止だがテトラ帯はいいようだ。そのテトラ帯のある場所だけにたくさんの人が集まっている。見ると、そこでは巨大な竿で巨大なウキを投げ込んでいた。後でわかったがこれが投げサビキというものだった。サビキ仕掛けはバケという魚の皮などで作った疑似餌をハリに絡ませておいて魚をだまして釣る方法だが、かごにコマセという餌をを入れて魚を寄せることもある。投げサビキも同じ原理だが、大きな竿でこの仕掛けを遠くに投げ、大きなウキを使ってその場所でサビく。見ているとみんな100mくらいは投げている。時々30cm以上もある大きなサバを釣り上げていた。

私も真似をしてみることにした。とはいっても竿は2m程度、ウキは大きめの棒ウキしかない。とりあえず投げると15mほどしか飛ばなかった。周りの方はみんな最低でも5、60mは飛ばしている。「お兄ちゃんそれじゃ無理だよ。」と失笑され、とぼとぼと退散した。

そのまま千葉港に行こうと思ったがどうも道がよくわからない。そうこうしているうちに市原市に入ってしまった。面倒なのでそのまま海岸に出られる場所をさがしながら南東に移動した。

ところが、全く海岸に出られない。このあたりは京葉工業地帯で、海岸沿いのほとんどが工場になっていて、海岸に出られる場所が極端に少なかった。しかたなしに30分ほど車を走らせていると、右側に港らしきものが見えてきた。それが長浦港だった。私の今のホームグラウンドのような場所だ。

私の家のある葛飾からは京葉道路と館山道を使って、空いていれば1時間程度で来られる。しかも岸壁に車を横付けにできるので、面倒くさがりの私にはありがたい。

あちこち回ってきたので到着時にはすでに3時を過ぎていた。急いで仕掛けを作った。何が釣れるかわからなかったし、海底の様子もわからなかったので、とりあえず8号のジェット天秤に9号の流線バリをつけて底を探ってみた。もちろん餌はいつもの青イソメで2,3cmのたらしでやってみた。

その時の私の釣りと言えば、ジェット天秤でそこを引いてくるパターンと、コマセなしのサビキ釣りしかなかった。1、2時間で数匹の型のいいハゼが掛かったが、これだったら行徳の方がマシだと思った。

長浦港入り口

11月に入っていたし、時間も時間だったのでだんだん周りも暗くなりはじめた。はじめての場所だったのと寒くなってきたの。少し心細くなってそろそろ帰ろうかと考えだした。竿を片付けようとしてリールを巻くと、なにか変な感触を感じた。カニと似ているが少し違う。ゴミなのかと糸を巻いてくると、黒い巨大なものがハリの先についている。一気に引き上げるとそれは大きなカレイだった。30cm以上はあるだろう。

私もびっくりしたが、周りにいた釣り人もびっくりした。少し離れたところで釣りをしていた人が集まってきてはしきりに、「これはいいカレイだ。」「立派。立派。」などとほめてくれる。とてもいい気分になった。

いい気分になったのでそのまましばらく続けていると、今度は別の竿にあたりがあった。ぬるっという感覚のあたりで上がって来たのは50cmくらいのアナゴだった。

この2尾でおかずには十分だったので、ここで引き上げることにした。

アナゴ、カレイ

帰りは高速に乗ると1時間ちょっとで着いてしまった。時間的には行徳に行くのと大して変わらない。

料理はカレイの身は刺身、アラは味噌汁。アナゴは煮つけにした。

カレイの刺身、アナゴの煮つけはとも絶品だった。カレイの刺身は白身の魚の中でも一番おいしいくらいだった。

後でわかったがカレイ釣りは忍耐の釣りだ。通常は大型の竿を3本以上用意して水面を扇形に距離を変えて丁寧に探っていく。少し探っては待ち、また探っては待ちという作業を永遠と続けるのだ。しかもカレイは水温が下がると活性が上がる魚なので、その作業を寒い冬にしかもさらに寒い海岸でやるのだ。その作業の末にボウズであることもよくあるようだ。名前とは違って華麗ではない地味な釣りなのだ。私には向いていない釣りだと思ったので、この後はあまりカレイを狙っていない。別の魚を狙っている時たまたまカレイがかかったことは何度かあったが。

ポイント

長浦港で釣れたが、そのポイントは現在立ち入り禁止だ。

東京湾で釣れるカレイはマコガレイと石ガレイだ。ともに冬の魚で夏は釣れない。ある程度水深のある砂底に潜んでいる。基本的に夜行性の魚だが目があまりよくないために多少明りのある場所を好む。ちょうど湾岸の工業地帯があっているのだろう。海底が砂浜の場所を探せばよいことになる。富津新港、千葉ポートパーク、稲毛海岸、検見川浜、有明南ふ頭公園、東扇島西公園、福浦海岸、横須賀うみかぜ・海辺つり両公園での実績がある。

カレイの釣り方

昔カレイは湾奥でもよく釣れたらしい。最近ではめっきり少なくなったが、それでも30cm級を1,2枚揚げているのをよく見かける。砂地の海底にいる魚で夏のキス、冬のカレイだ。この2種は同じ場所で交代で現れるような感じだ。

仕掛け

カレイは飾り物を好む。仕掛けはなるべく派手な色で装飾品もたくさんつけた方がよい。やり方は砂煙をたてるように誘って少し引いては待ち、また引いては待ちの繰り返しだ。忍耐強く探っていほしい。

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