2、ハゼをたずねて三十里 1 柴又編

江戸川でのハゼ釣りを再開したのは21世紀に入ってからのことだ。

ご近所の銭湯に時々出かける。30代から70代くらいの常連さんが何人かいて、何度か通ううちに話すようになった。その中の何人かは釣りが趣味で時々船に乗って出かけているらしい。話の中で江戸川のハゼの話題になった。地元出身の私に話が振られたので、子供のころのハゼ釣りの話をした。そのうちそのひとりMさんとずいぶんと話が盛り上がってしまい、明日行こうということになってしまった。

次の日はちょうど日曜日、小学生の娘と息子を連れて江戸川に向かった。場所は「寅さん」や「こち亀」で有名な金町浄水場のとんがり帽子の取水塔下のテトラ帯。餌の青イソメは近所の釣具屋で用意しておいた。さすがにこの年になって、子供のときのように草を引っぺがしてミミズをあさるようなことは恥ずかしくてできない。待ち合わせ時間など決めていなかったが、しばらくするとMさんがあらわれた。

子供のころのあの感覚があったのでハゼなどすぐに釣れるものだと考えていた。ところがいくら待ってもアタリがこない。ようやく30分くらいたった時にMさんが一匹釣りあげた。Mさんが子供たちにアドバイスしている。

「ちょっと遠くに投げて少しずつ手前に引いてくるようにしてごらん。」

このときはわからなかったが、これが『サビく』という動作だとあとで知った。

子どもたちは素直にアドバイスを聞いて娘が1匹釣りあげた。続いて息子にもアタリがあり、1匹追加。私もサビいてみてやっと1匹ゲットとなった。1匹かかるたびに子どもたちは歓声をがあげていた。が、この場所はどうも障害物が多かったらしく、すぐに針が引っ掛かっては切れてしまう。針が1セットなくなってしまうまで続けたが、結局4人で7,8cmほどのハゼ10匹の釣果だった。Mさんのご厚意で獲物は全部いただいた。獲物はもちろんカラ揚げになって3人の胃袋に収まった。子供たちもおいしいと言っていた。

楽しい休日を過ごしたのだが、どうも私は納得がいかなかった。このことが私の狩猟魂に火をつけることになる。

翌月、Mさんとまた銭湯で会った。Mさん曰く。

「あそこのテトラ帯より少し上流の旧葛飾橋の下あたりがいいよ。」

どうもテトラ帯は魚影が濃いのだが、障害物が多くて魚がかかってもすぐに仕掛けが引っ掛かってしまう。橋の下の魚影はそれほど濃くはないが砂地なので障害物がほとんどない。ゆえに、魚がかかればほとんど100%取り込める。また、針のロスもないので仕掛けを作りなおす時間も節約できる。トータルで考えればずっと大きな釣果が期待できる。

柴又の象徴

Mさんの言うとおり橋の下はよかった。テトラ帯で1時間当たり3,4匹だった釣果が、ここでは5,6匹。さびいても根掛りしないのでストレスも感じない。この場所は天国か?いや、ここで別の冷静な自分が顔を出す。たしか、今日のニュースで『江戸川放水路のハゼ 初心者でも200匹の釣果』なんてやっていたのを思い出した。私が3,4時間やって20匹前後のとき100匹をらくらく釣っている人もいるわけだ。『江戸川放水路』とはいったい何なんだ?この場所も江戸川のはずだ。同じ江戸川でこんなにも差が出るのか。いったいどうしてだ?そんなことを考えていたらどうしても江戸川放水路へ行ってみたくなってしまった。

ということで、翌週次の目的地ハゼ釣りのメッカ「江戸川放水路」へ向かった。

ポイント

今回は金町浄水場取水塔付近と葛飾橋下で釣った。ハゼは河口付近から5km程度までは川をさかのぼる。

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