29、浦安偵察 メジナ

インターネットの釣り掲示板を見ていると浦安という名前をよく見かける。ハゼ釣りをしている行徳海岸とは目と鼻の先だが、行ったことがなかった。9月、ハゼ釣りの帰りに浦安によってみることにした。とは言っても、地図で調べてもどこに行けばいいのかよくわからない。とりあえず車の止められそうな場所を探すと、高洲海浜公園に駐車場がある。ここを目指すことにした。

浦安に着くとびっくりだった。

最後にここに来たのはその10年ほど前にことだった。その時は埋め立てられたばかりで、まだ、マンションもまばらだったし、空地が目立っていた。新浦安の駅前もスーパーが一軒あるくらいだった。今はまるっきり違う街になっている。今では林立する高層マンションやホテルを中心に緑を配置し、さながら海辺のリゾートような街になっていた。この街で釣りをするイメージが湧かない。

高洲海浜公園は駅前からは少し離れていているが、整備された美しい公園だった。秋晴れの温暖な日だったので、たくさんの人が繰りだしている。スポーツをしたり、お弁当を食べたり、それぞれが思い思いの方法で楽しんでいる。公園の一番南側が海になっている。高層ビル街のすぐそばに海があって、奇麗な公園がある。絵にかいたような公園都市だ。ここに住むおしゃれなご夫人方をシロガネーゼを模してマリナーゼなんて呼ぶのも分かる気がする。自分がシンガポールにいるような錯覚をした。

公園の海側にはたくさんの釣り人が陣取っていた。天気が良くて房総半島や三浦半島の先の方まで見えていた。絶景だ。

釣り人は大きな竿で盛んに沖に投げている。ひとりに聞くとサヨリを釣っているとのこと。しかし、その釣果はなかった。ほかのバケツもにもほとんどサヨリは入っていない。

皆が5mも6mもある長い竿を持っているのが不思議だったが理由がわかった。釣り場は手前にテトラ帯があり、しかも柵があるので、相当遠投をしないと深場まで仕掛けが届かないのだ。私の道具では届いてもせいぜい50mで、しかも少し逆風が吹いていた。

私はここでは無理だと思い移動することにした。たぶんここの人たちは、釣れても釣れなくても、ここで釣っているだけで気分はいいのだろうなと思った。いい釣りだ。

公園から東に2kmほど行くと港がある。浦安港だ。港の方が海岸より水深が深いので釣りやすだろうと、早速向かった。が、どう行っていいのかがよくわからない。海岸線にほとんどに工場が建っていて入場禁止になっている。何回か道に迷ってようやく港に入る方法を発見した。建設中の道路の横に車を置いて、その道路を100mほど歩くと港の入口にたどり着いた。

先客が10人ほどいたので釣果を尋ねるとママカリが少し上がっているとのこの答え。秋の時期のママカリはあまりうまくないのはわかっていたので、とりあえずアイナメ狙いでミャク釣りをしてみることにした。

30分ほどやってみたが1つのアタリもない。ここにはアイナメはいないと判断し場所を後にした。

次に行ったのがディズニーランド裏に広がる海岸線だ。地図で見るとこの全長3kmはある海岸線はすべてテトラ帯だ。それならアイナメやメバルなどの根魚の釣果が期待できる。だが、実際に行ってみると車を止める場所がなく断念した。近くの高級ホテルの駐車場に止めることもできたが、それはさすがに恥ずかくてやめた。麦わら帽に半パン、サンダルで真っ黒な顔の無精ひげ男だ。ヒルトンには似合わないだろう。

その日最後に向かったのが浦安斎場裏の海岸線だ。ディズニーランド裏の海岸線とつながっている。正確に言うとディズニーランド裏で駐車できるスペースを探しているうちにここまで来てしまったのだ。

先客が何人かいて、やはりサヨリを狙っているようだった。釣果は芳しくない。ポイントの状態を見ると手前にテトラがあり10mほど先に岩礁がある。その部分だけが極端に水深が浅かった。投げるにはこれがが邪魔だった。根魚の方は期待できそうなので、私はテトラ帯まで降りて狙うことにした。

日が暮れかけている。1本をウキ釣り用にもう1本をミャク釣り用に仕掛けを作って戦闘開始。

ウキの方は置き竿にして、ミャク釣り用の竿で穴釣りをした。

しばらくやってみたが穴釣りはアタリがない。一方ウキの方はなにか魚がアタっているようだ。餌が頻繁に取られている。ウキの方が有望なので竿を一本にして専念することにした。

アタリのある魚は結構厄介な魚だった。今までとは明らかに違うアタリだ。今までのようにアタリがあってから一呼吸置くのではなく、素早く合わせないとあっという間に餌を取られる。何回か餌を取られて、とうとうハリを食わせることが出来た。食いつくとものすごい勢いで飛んでいく。たぶん根に潜るのだろう。根に潜る前に素早くリールを巻いてうまく取り込んだ。上がって来たのはメジナだった。20cm弱だったがこれも立派なメジナだ。

富津の下洲港で大量に子メジナを釣っているのを見たことはあるが、まさかこんなところで釣れる魚だとは思ってもみなかった。

よくテレビの番組で見るメジナ釣りは磯釣りの主役だ。5mも6mもある巨大な磯竿で特別な仕掛けを駆使して行う。船で磯に渡り、1日やって1匹とか2匹とかいう世界の魚だ。もちろんサイズは違うが、場所はディズニーランドの裏、2000円の釣りセットで釣る魚ではない。

このメジナ釣りは一度コツを覚えたら、結構はまる釣りだ。微妙なあたりを捕らえて素早く合わせる。その駆け引きがたまらない。ちょっとタイミングを外すと根に潜られたり、餌だけ取られたりする。メジナ釣りに人気があるのもそのためなのかもしれない。

その後はしばらく入れ食い状態が続いた。結局10数匹を釣り上げたが、日が完全に暮れるとアタリはぴたっと止まった。ウキも見えなくなったので終了とした。

メジナ釣果

道具を片づけてあたりを見回すと真っ暗だった。何人かいた釣り人も一人もいなくなっていた。車を止めてある場所は斎場の隣だ。焼場といったほうがしっくりくるかもしれない。ひとっこひとりいない。私は幽霊などというものは信じないが、さすがにちょっと不気味な感じがした。

メジナは少し臭みの出やすい魚だ。料理は臭みに気をつけたい。

1、刺身

これは大丈夫だった。うまい。

2、塩焼き

気にならないくらいだが少しだけ臭う。

3、塩釜焼き

これはおいしかった。

ニオイが逆にアクセントになっておいしい。

煮付けは作っていない。から揚げも骨の太さを見てやめた。

メジナの塩釜焼き

ポイント

メジナは磯釣りで狙う魚の代表格だ。今回は浦安電波塔付近、ディズニーランド裏で釣ったが、こんな魚が東京湾で釣れるのが最初は不思議だった。が、岩礁地帯ならどこにでもいるので、東京湾では比較的簡単に釣れる魚だ。アイナメやメバルを釣っている時の外道としてよくかかる。エサを飲み込むと一目散に岩場に隠れる習性を持っているので合わせるタイミングを上手く取らないと釣り上げられない。釣っていてとても面白い魚だ。昼間は小型、夜は中型、大型が釣れる。

餌ジグにもよくかかる。

浦安名物の釣り2つ

私の廉価盤セットでは無理だが浦安で名物の釣り2つを紹介しよう。

1、サヨリ釣り

秋に海岸沿いにずらっとサヨリ狙いの竿が並ぶ姿は壮観だ。投げサビキ仕掛けに一種であるサヨリ仕掛けで狙うがハリはバケバリではなくてエサを付けて使う。

なるべく沖まで投げる。そのために竿は長い方がよい。仕掛けを投げたら、軽くサビいてコマセを撒き、だんだんと手前に寄せる。サヨリは回遊魚なので群れにあたれば数が釣れる。

2、ギャング釣り

これを釣りといっていいのかはわからないが特筆するべきは、「バカ貝釣り」だろう。釣り方は何とも奇妙だ。4m以上の大形の竿を用意し、三角天秤という特殊な天秤の先にボラなどを引っ掛けハリであるギャング針を装着する。道糸には多少の根掛かりにはびくともしないPEラインの5号以上を結ぶ。それを100mほど投げてただ底引きするだけだ。バカ貝は海底で口を開けている。そこにギャング針が触ると貝は驚いて口を閉じてそのまま針に引っ掛かって揚がってくる。上手い人になると1時間でバケツいっぱいほどになる。この釣りは主に冬の釣りだ。獲物は他にホンビノス貝、ツメタ貝などの貝類もほかにカレイやマゴチなどの大物が掛かることもある。

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